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人事のブレーン社会保険労務士レポート第202号
コロナ不況による副業の考え方

1.はじめに

新型コロナウイルス感染拡大により休業を余儀なくされたり、一部の労働者を休業させて業務を行っている企業もあります。
労働者の収入は大きく減るわけですからそれを補うために副業をやらして欲しいという申し出が増えており、企業としてどの様な対応をしたらいいのかというご相談が増えております。
今回はこの副業について掘り下げていきたいと思います。

2.副業の位置づけ

副業とは本業があるという前提の概念です。
副業が忙しくて本業が疎かになるということはあってはならないわけです。
まず今回の新型コロナウイルス感染拡大により休業を余儀なくされている期間に限り副業を許可するという枠組みが大切になります。
後述致しますが、残業時間は副業と通算されます。割増賃金の問題だけではなく、働き方改革による残業規制も副業との通算になります。
ですから休業が必要となくなり、通常勤務に戻る際にはこの勤務時間の通算が問題になってきます。忙しくて残業してほしいのに残業の上限に引っかかってしまい残業ができない事態が生じてしまうのです。
ですから副業は新型コロナウイルスの影響がある期間だけとしておかなければならないのです。
また職業に貴賤はありませんが、副業を許可する範囲を定める必要があります。
塾の先生は副業中でも生徒にとり「先生」であり、先生として生徒や保護者から信頼される立場でなければなりません。
この様な観点から副業について職種を制限するということも重要になってきます。
また歯科衛生士が休業中に親族が経営している飲食店を手伝っていたという事例がありました。病院内での感染予防の観点からも重要となるわけです。

3.すぐに辞められる職業

いわゆるコロナ不況での休業ですから、経済環境が戻ってくればすぐに休業を解くわけです。ですからそれを前提とした労働契約でなければなりません。
副業先に対してその点を理解してもらい労働契約書を締結するようにしてもらわなければなりません。
労働者の収入が下がっているのに会社の都合ばかり話しているというお叱りを受けそうですが、一日も早くコロナ不況を脱出することが目的であり、その間の措置としての副業ですから、その点を労働者に理解してもらわなければなりません。

4.残業手当の計算

労働基準法では一日8時間、一週40時間と法定労働時間が定められています。これを超えると割増賃金が必要となります。
一日休業、一週間すべて休業となれば副業との労働時間の通算はあまり問題になってきません。
午前中働いて午後から副業する場合や、週3日働いて週3日副業する場合も想定されます。
この場合労働時間はどの様に考えるべきでしょうか。
昭和23年10月24日基収2117号の通達の中では「2以上の事業主に使用されその通算労働時間が8時間を超える場合割増賃金は如何に処置したらよいのか」という問いに対して「法定時間外に使用した事業主は法37条に基づき、割増賃金を支払わなければならない」とされています。

法定労働時間外に働いている場合に割増賃金を支払うとされています。
一日8時間、一週40時間を超えた時間に使用している事業主が割増賃金を支払う必要があります。
ですから午前中に副業を5時間行い、午後から4時間働いた場合には副業先ではなく本業である会社が一時間の割増賃金を支払わなければなりません。
ここが問題点であり、副業をする際に気を付けなければなりません。また、残業規制についても同様になります。
月の残業時間が45時間以内。これを超過する場合には特別条項が必要となり6か月まで。これらをはじめとする残業規制は副業先と通算されます。
これも頭が痛い問題であり、休業の必要がなくなった場合には副業を認めないとする大きな理由の一つです。

5.個人事業主としての副業

個人事業主としての副業については、そもそも副業が労働者ではなく労働時間という概念ではないために通算の問題はなくなります。
しかし副業先で「委託契約」が「労働者」とされるケースがあります。
副業中に怪我をした場合、労働者であれば労災保険が使えます。委託契約であれば労災保険は使えません。被災した労働者が労災保険を使いたいがために、委託契約ではなく実態として労働契約であると主張し、認められるケースがあります。
この場合、割増賃金の問題と、長時間労働により労働者が怪我や病気になった場合には「労働時間の通算」の観点から責任を問われる可能性が出てきます。
委託契約だから大丈夫と無条件で安心できるわけではありません。
この点も非常に注意が必要になります。

6.まとめ

コロナ不況は非常に深刻であり、企業の支払い能力も低下し、それにより労働者の生活も厳しくなっています。
しかし、コロナ不況を乗り切った先を考えて行動していかなければ、企業活動を本格的に元に戻そうとしても労働者がいなければどうしようもありません。
労働者とコミュニケーソンを通常以上にとりながら、業績の見通しを伝えていくことが重要です。
いつまで経済環境が厳しいのか。受注状況などを踏まえてしっかりとコミュニケーションを図り、労働者のモチベーションを維持していくことが大切です。
参考にしていただければ幸いです。

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