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人事のブレーン社会保険労務士レポート第190号
働き方改革を進めるにあたって最低限知っておきたい休日に関する知識

1.はじめに

昨年の8月15日号に働き方改革における残業規制の詳細をお話いたしました。

その中で、45時間を超える特別条項の運用についてはの残業時間のみで、例えば残業が45時間で法定休日労働時間が20時間であれば合計65時間労働であるが、残業は45時間であるために特別条項の適用はなく、6回のカウントもされないというお話を致しました。
しかし、そもそも法定休日とは何かとの質問が多く、祝祭日の労働と所定休日労働の違いについてもご質問を受けるのでその点を絡めてお話を進めていきたいと思います。

2.法定休日とは

労働基準法では週に一回の休日を与えてくださいとされています。その週に一回与えなければならない休日を法定休日といいます。
この日に労働をさせれば1.35の乗率で割増賃金を支払わなければなりません。

3.所定休日とは

(1)所定休日の定義

所定休日とは前で述べた法律で求められている法定休日以外に会社が任意に付与する休日です。
所定休日は与える必要はありませんが、1週40時間労働が我が国の労働時間法制の原則ですので、この40時間を守るために休日を与えなければなりません。
ですから所定休日は法律上付与することが求められていませんが、週40時間労働との関連において付与しなければならない休日となります。夏季休暇や年末年始休暇も所定休日に含まれると考えていいでしょう。
また祝祭日は行政機関や金融機関が休みになりますが、外食や小売業が営業しているようにこの日を休ませなければいけないというルールはありません。
ですから祝祭日を休ませるということはこの日は所定休日になります。

(2)所定休日と祝祭日との関係

前述の通り祝祭日は所定休日となります。法定休日の日がたまたま祝祭日と重なることもありますので、この場合には法定休日となります。
あるクリニックでは木曜日が休診です。しかしこの週の木曜日以外の平日に祝日がある場合には木曜日を診察日としています。
週5日の診察日が確保されることとなります。
また、自動車製造業界では祝祭日は休日ではないという事です。祝祭日に出勤しても割増賃金等を支払う必要はありません。
しかしここで注意が必要なのは「予め出勤日となっていること」「1週40時間の所定労働時間であること」の要件を満たしていれば可能であるのです。
2つの要件を満たしていなければ、祝祭日や祝祭日のある週の休日に出勤させた場合には割増賃金を支払わなければなりません。
1週40時間の範囲内であってもこの場合には1.00の賃金を別途支払う必要があります。
祝日があり1週32時間の所定労働時間だったとしましょう。祝日を所定休日とした場合には8時間を労働者にプレゼントしたということになります。
ですから月給制の場合には別途に賃金を支払う必要があるのです。時給制の場合には労働した時間に対応した賃金額の支払いになりますのであまり難しく考える必要はありません。

(3)残業時間と休日の関係

令和に元号が変わる際に10連休がありました。金融機関も行政機関も10連休ですので連休前に10日分の仕事をさばかなければなりません。私の事務所でもこの連休前の残業時間は多くなりました。
たくさん残業してもその後は10連休ですから残業時間は増えましたが、連休中は休んでますから総労働時間は減りました。
何が言いたいかというと休日を増やすと残業が増えるという事です。
今回の働き方改革による残業規制ですが、あくまで残業時間と法定休日労働時間で判断します。
今回の10連休の場合、連休の前後の残業時間が多くなることは想像できることですが、10日間しっかり休ませても1日8時間、1週40時間を超える時間を残業時間と考えるわけです。
ですから連休前後の残業を減らすためには10連休中に出勤日を設ける必要があるのです。
休日が多いとうことは残業規制の評価に反映されません。あくまで残業時間に焦点を当てているのです。ですから祝祭日を予め出勤日として、連休前後の残業を抑えるという事も大事な考え方になってくるのです。

 

4.法定休日と残業規制

昨年のメルマガでもお話ししましたが、残業規制は以下の3点です。
第一は、残業時間の月の上限は45時間。これを超えて残業させる場合には36協定において特別条項を設けなければなりません。そして特別条項は年6回までとなっています。
第二は、残業時間と法定休日労働時間の合計が100時間未満であること。
第三は、2カ月から6カ月の月の残業時間の平均が80時間以内であること。
特別条項の適用についてはあくまで残業時間なので残業時間が45時間の範囲内であればいいわけです。これに法定休日労働時間が20時間あっても合計の時間外労働時間は65時間となりますが、特別条項の適用はないのです。年6回のうち一回としてカウントされないという事です。
ですから法定休日の設定は非常に大事なポイントになってくるのです。

 

5.まとめ

ただ単に残業を減らせと言われても難しいことです。ルールを研究してしっかりと対策を立てていかなくてはなりません。
是非ご参考にしてください。

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