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人事のブレーン社会保険労務士レポート第171号
ローカルルールと愛着アプローチで人材定着率を向上させる

1.はじめに

人手不足の中、どの様にすれば人が集まるのか。どの様なことをすれば定着率が上がるのかというご相談が多いです。

人材募集に関しては休日数を増やすとか、残業を減らすと行った対策をしている企業が多数あります。
この分野については、私は今まで取り組んできましたから、企業サイドに立ってお手伝いをしております。

定着率を上げる問題に関しては前回も書きましたが今回も掘り下げていきたいと思います。

2.能力を発揮できる環境

専門的な能力を発揮するためには、発揮する環境を作る必要があります。お医者さんが「オペをする時は相性のあう看護師と組まないとペースが乱れる」ということを仰っていました。集中して手術を行うためには自分のペースをしっかりと保つことが大事であり、ペースが合わない看護師と手術をするとリズムが乱れて集中できないということです。

本当のプロであれば、どんな環境でも結果を残さなければならないということは当然ですが、仕事のやりやすい環境とやりにくい環境を認識することは大事なことです。

社会保険労務士を始め士業も同様です。では転職はどうでしょうか。

3.ローカルルールの大切さ

転職をするとは全く新しい環境で仕事を行わなければなりません。人間関係も一から構築をしていきます。

組織の文化も違いますし、仕事のやり方も違います。

仕事で求められる能力とは「専門的な能力」と「組織で働く能力」です。

組織で働く能力とはその企業の「ローカルルールを知った上で、他人とのコミュニケーションを行っていく」ことです。

即戦力として入社したのに能力が十分に発揮できない場合には、このローカルルールが十分に理解されていないケースが考えられます。

ローカルルールについては、どんなに専門的な能力を持った中途社員でも、その組織に初めて属すわけですから一から教えなければなりません。

このことを見落とすと「仕事できるって言っていたのにできないじゃん」となってしまうのです。

能力が発揮できない中途社員に対しては「ローカルルール」に焦点を当てて教育をすべきなのです。

また、ローカルルールになじめない社員もいます。面接時に専門的な能力を聞き取ることはしていると思いますが、前の職場ではその能力を発揮する前提の「ローカルルール」がどの様なものだったのかをヒアリングして、うちの会社で専門的な能力が発揮できるのかを十分に検討する必要があります。

例えが適切かわかりませんが、日本の研究環境に合わず、海外で研究をしてノーベル賞を受賞された方もいらっしゃいます。

ローカルルールとは、細かいオペレーションから組織風土まで広い範囲でとらえていく必要があります。

4.愛着アプローチという視点

私の専門分野の一つは「問題社員への対応」です。問題社員への対応をしていく中で色々と悩んでいたのですが、「愛着障害」の本を読んだ際に、カウンセリング等で「自分が出来ていないこと」を指摘すると自信がなくなり、よかれと思ってアドバイスしたことが「自分のことを理解してくれない」と感じたりしてしまうということが書かれていました。
患者さんの安全基地となる信頼関係を築くことで劇的に症状が改善するという内容でした。

これは社員教育にも言えることであり、出来ないことの指摘も業務ですから大事ですが、その原因はローカルルールになるのか。

ローカルルールでもオペレーションの問題であれば細かい教育をしていく必要がありますし、組織風土の問題であればしっかりと話を聞いて教育担当者と信頼関係を築いた上で組織風土に適応できるように誘導していくことが必要になります。

個人的には愛着アプローチに着眼して、社員の教育や定着率の研究をしていきたいと考えています。

5.まとめ

賃金を上げれば人が集まる時代ではなく、労働条件の中でも休日や労働時間が注目される時代になっています。
法制面でのアプローチも今まで通りしっかりとお手伝いいたしますが、それ以外の定着率向上に関する施策もしっかりとお手伝いしていきたいと思います。

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