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人事のブレーン社会保険労務士レポート第159号
高年齢被保険者とは

1.はじめに

平成29年1月1日より育児介護休業法と雇用保険法が変わります。育児介護休業法については、育児休業規程及び介護休業規程の変更が必要になります。

この変更の実務については後日お話しするとして、今回は保険料に関しての問い合わせが多い雇用保険法改正についてお話をします。
4月のメルマガでも取り上げましたが、若干変わっておりますので、改めてお話をしたいと思います。

2.今までの高齢者の雇用保険

4人に1人が65歳以上の高齢者という時代を迎え、企業も人材確保の観点から高齢者雇用について前向きに検討をしなければならなくなりました。
現在は4月1日現在で64歳以上の労働者の雇用保険料は事業主、労働者共に免除されています。
 そして65歳に達した日以降に離職した場合には、通常の失業等給付ではなく「高年齢求職者給付金」として被保険者期間が一年未満で30日、一年以上で50日の基本手当が一時金として支払われ老齢年金との併給も可能です。
この高年齢求職者給付金は65歳に達する日前より引き続き雇用されている場合にのみ高年齢継続被保険者となり、65歳に達した日以降新たに雇用された労働者は雇用保険の被保険者とならず我が国の短期的な失業に関するセーフティーネットの対象外でした。
高齢化社会また、それに伴う一億総活躍社会へ向けて65歳以降の高齢者も国の失業政策の枠組みに取り込んで行こうというのがこの改正の目的です。

3.新たに設けられる「高年齢被保険者」

(1)概要

改正法施行に伴い、平成29年1月1日より「高年齢継続被保険者」から「高年齢被保険者」に変わります。
65歳以降新たに雇用される労働者の対象となりますから「継続」という言葉がなくなりました。この変更により3つのパターンの手続きが必要になります。

(2)平成29年1月1日以降新たに雇用される65歳以上の労働者

この労働者は雇用された日から雇用保険の被保険者になりますので、雇用された日の属する月の翌月10日までにハローワークに資格取得届の提出が必要になります。
また、週20時間未満の被保険者が労働条件の変更により週20時間以上となった場合には、当該労働条件の変更が行われた日に被保険者資格が生じることとなります。

(3)平成28年12月31日より引き続き雇用されている65歳以上の労働者

高年齢継続被保険者に該当していない65歳以上の労働者は改正前では被保険者資格がありませんでしたが、今回の改正法で被保険者資格が生じますので施行日である平成29年1月1日より高年齢被保険者としてハローワークに資格取得届の提出が必要となります。
ただし、該当者が複数いることも予想され事務の混乱を防ぐために同年3月31日までに資格取得届を提出することとなっています。
資格取得届の提出前に退職した場合でも、1月1日に被保険者資格は発生しておりますので資格取得届の提出は必要になってきます。(この場合資格喪失届と同時に提出しても問題ありません。)
また週の所定労働時間が20時間未満の労働者は適用除外ですからこの手続きの必要はありません。
20時間以上に労働条件が変更になった場合には(1)の手続きにより資格取得が必要になります。

(4)高年齢継続被保険者である労働者を引き続き雇用する場合

この場合にはハローワークで当該労働者について把握しており、手続きは必要ありません。自動的に高年齢被保険者となります。

4.高年齢被保険者の雇用保険料

雇用保険料については平成31年度までは保険料が免除となっておりますので、保険料の実務についいては暫く変更はありません。

5.高年齢被保険者が失業した場合の給付

(1)高年齢求職者給付金をもらう為の条件

高年齢被保険者が失業した際に「高年齢求職者給付金」をもらうためには離職日前1年間に雇用保険に加入していた期間が6カ月以上あることが条件となります。
一ヶ月とカウントされるためには賃金の支払い基礎となった日数が11日以上あることが必要になります。

(2)高年齢求職者給付金の額

これは従前の高年齢継続被保険者と同様です。一年未満の被保険者期間では30日、一年以上では50日となります。
これは一時金であり、離職理由により日数が変わることはありません。
また老齢年金との併給も可能であります。

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