メルマガ人事のブレーン社会保険労務士レポート

人事のブレーン社会保険労務士レポート第154号
安全衛生委員会について

1.はじめに

最近ビルメンテナンス業を中心に安全衛生に関する労働基準監督署の調査が行われています。

安全衛生管理体制、リスクアセスメント、安全衛生委員会、ヒヤリハットをはじめとする安全衛生活動の取り組み、ストレスチェックをはじめとしたメンタルヘルスを安全衛生委員会の審議事項として行っているのか等の調査が中心です。

ストレスチェックについてはバックナンバーでご確認ください。
http://www.yamamoto-roumu.co.jp/knowledge/mg_20151115.html

本稿では、労働基準監督官や産業安全専門官からの指摘事項が多い安全衛生委員会について取り上げてみたいと思います。

2.安全衛生委員会を設置しなければいけない事業場

(1)衛生委員会を設置しなければいけない事業場

衛生委員会を設置しなければならない事業場とは「常時使用する労働者が50人以上の事業場」です。これはすべての業種が対象となります。

(2)50人の計算方法

50人の計算方法はわかりやすく言うと「タイムカードの数」です。極端な話、月に一回1時間しか働かない労働者でも一人としてカウントします。ですから正社員はもちろん、パート、アルバイトも人数に数えます。
そして、出向者や派遣労働者もこの人数にカウントします。派遣労働者をカウントすることを忘れている企業が多いので注意が必要です。
この50人の計算する単位ですが、事業場ごとになります。企業全体は75人いるが、本社30人、A営業所20人、B営業所25人という内訳では衛生委員会の設置義務はありません。あくまで企業単位ではなく、事業場単位ということになります。

事業場については「事業場とは、工場、鉱山、事務所、店舗等のごとく相関連する組織のもとに継続的に行われる作業の一体をいう。したがって一の事業場であるか否かは主として場所的観念によって決定されるべきもので、同一場所にあるものは原則として一の事業場とし」と通達で決められています。この50人のカウント方法は産業医と衛生管理者の選任と同様です。

(3)安全委員会を設置しなければならない事業場とは

衛生委員会は常時使用する労働者が50人以上であればすべての事業場に選任しなければならないとされています。一方で安全委員会は「危険な作業を行う事業場」に選任が求められており、次のようになっております。

常時使用する労働者が50人以上で次の業種
林業、鉱業、建設業、製造業の一部業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄 鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部の業種(道路 貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業

常時使用する労働者が100人以上で次の業種
製造業のうち上記以外の業種、運送業で上記以外の業種、電気業、ガス業、熱 供給業、水道業、通信業、各種商品卸業、小売業、家具・建具・じゅう器等卸 売業・小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場

衛生委員会と併せて運営できるので「安全衛生委員会」となっています。

3. 委員の選任

衛生委員会、安全委員会ともに「総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者等」を一名選任しなければなりません。
そして衛生委員会は衛生管理者、産業医、安全委員会については安全管理者を選任しなければなりません。
そして、「総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者等」以外の委員の半数については労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならないとされています。

ですから衛生委員会については、衛生管理者と産業医が最低でもメンバですから、労働者の過半数代表者が推薦する者は2名最低でも指名しなければなりません。ですから最低でも5名の構成となります。
安全衛生委員会についてはこれに安全管理者が加わりますから3名を労働者過半数代表者からの氏名で選ぶ必要があるため、7人が最低の構成人数になりま す。
産業医、衛生管理者、安全管理者については各々の役職が複数いる場合には、そのうちの一人を選任すればいいということになっています。

200人以上の事業場では衛生管理者を2人以上選任する必要がありますが、そのうち1名を衛生委員会のメンバーとして選任すればよいということになります。

4.調査審議事項

(1)衛生委員会
衛生委員会が調査審議を行わなければならない主な事項とされているのは以下の事項です。

 ・衛生に関する規程の作成に関すること。
 ・衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。
 ・衛生教育の実施計画の作成に関すること
 ・定期健康診断等の結果に対する対策の樹立に関すること。
 ・長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
 ・労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。

ストレスチェックの実施や長時間労働者の産業医との面談等、心の健康や長時間労働対策も重要な審議事項とされています。
また、衛生管理者の週一回の職場巡視によって得られた情報が委員会の審議でどのように活用されているのか。
調査の際に上記項目が審議されているのか調べますので、日頃より準備を行っていく必要があります。

(2)安全委員会
衛生委員会が調査審議を行わなければならない主な事項とされているのは以下の事項です。

 ・安全に関する規程の作成に関すること
 ・危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、安全に係るものに関すること
 ・安全に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。
 ・安全教育の実施計画の作成に関すること

ヒヤリハットの記録をし、委員会でしっかりと対策を考えているのかを調査ではみられます。そしてその結果をリスクアセスメントにつなげるように指導されます。
日頃からヒヤリハットの事例を収集し、改善を行う施策を実施していくことが求められています。
また安全管理者は衛生管理者と違い、週一回の職場巡視の義務づけはなく、随時行うこととなっており、その作業場等の巡視した情報を委員会で審議することも求められています。

5.その他

衛生委員会及び安全委員会は月に一回以上の開催が義務づけられており、その議事録を労働者に周知することが求められています。
ビルメンテナンス業など少人数で掲示や回覧等が困難な場合には、衛生管理者や上長などが職場巡視した際にその議事録をもとに朝礼等を行うことでも周知したことになります。

6.まとめ

労働基準監督署の調査は、安全衛生委員会については議事録だけではなく、ヒヤリハットやリスクアセスメント、健康診断の有所見者や長時間労働者への医師の面接指導への対応など、継続的に取り組んでいないと出来ないことをチェックしてきます。
出来ることからしっかりと取り組んで、労働災害の防止に役立てていくことが求められています。

人事のブレーン社会保険労務士レポート一覧へ