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人事のブレーン社会保険労務士レポート第150号
社員教育に必要な基礎知識

1.はじめに

新入社員が入ってくる季節になりました。
新入社員に限らず、社員教育とはどのような考え方で進めるべきなのでしょうか。
今回はこのテーマを掘り下げてみたいと思います。

2.能力差をどのように考えるのか

人間の成長する能力は個人により違います。
私はこれを階段にたとえます。

例えば即戦力の社員。
これは階段の一段目が高い社員。
じっくりと教育していかなければならない社員は、階段の一段目が低い社員。

ここまではご理解いただけると思います。

問題は「階段の二段目の設定」です。

入社時の能力は何となくわかります。
この社員を成長させるためにはどうするのか。
階段の設定をしっかりしなければ成長できません。
目標設定の問題ともいえます。

一段目の階段が高くても二段目以降は低い社員もいます。
逆に一段目の階段が低くても、二段目以降の階段が高く、即戦力だった社員を
追い抜いていくことも現実としてあります。

階段の高さを適正なものにしていくことが社員教育にとって重要なのです。
階段の高さが高すぎても昇れませんし、低すぎれば潜在能力を引き出せません。

3.階段の一段目

私は、入社時の能力を階段の一段目と表現します。
人によって高さは違います。
まず入社してから「階段の高さ」の把握をしっかりと行わなければ今後の教育
が適正にできません。
そこから始めましょう。

話は変わりますが、私が皆さんに「新入社員教育を頑張ってください」とお伝えしても、
皆さんは何を頑張ったらいいのかわからないですよね。

新入社員も同じです。
何を頑張るのか明確でなければ、好き勝手に頑張ってしまいます。

例えば、私が理事を務めている保育園では、新入社員は「安全」を物差しに教育します。
保育園や幼稚園、小学校には親として教育面の充実を求めてしまいますが、
それは安全が確保されている前提です。
ですから幼稚園や保育園、学校では 「安全な保育と教育を行える環境」 が
すべてのスタートなのです。
新入社員にはこの環境を整えられる保育や教育を行えるようになって初めて、
充実した保育や教育を目指してもらわなければなりません。
いわゆる「基礎教育」です。

外食産業は、食中毒を出さないことはもとより、お客様に不衛生であると
絶対に思われない環境作り。

建設業や製造業は事故が起きないような自己管理や整理整頓といった
環境の整備が必要です。
忙しい時に、作業手順を誤ったり、省略することで大きなトラブルが生じたり、
事故につながったりします。
忙しいときでも一定水準のサービスを提供できる社員になってもらうことが
まず重要なのです。

このように、いい商品、いいサービスを提供する前提は、お客様が
「出来て当たり前」
と思っていることを、どんなに忙しくてもやり続けることなのです。

不衛生だと一度感じてしまったら、どんなに美味しい料理でもお客様は満足しません。

階段の一段目を把握して、そしてそれぞれの企業の
「お客様が出来て当たり前と思っていること」
をまず出来るようになる。
これが階段の二段目の設定だと思います。

4. 階段の高さと時間軸

よく階段のお話をすると「3年以内にはここまで昇ってもらわなければ困るのよ!」
という主旨のご意見をいただきます。
仰るとおりだと思いますが、この点はどのように考えればいいのでしょうか。

冒頭にお話をしたように、階段の二段目以降の高さも人によって違います。
二段目以降の設定の注意点は、時間軸を必ず入れるということです。
一年かけて一段しか昇らない人もいれば、一年かけて20段昇る人もいます。
小さい階段を一年かけてたくさん昇らすのか、大きい階段を数段昇らすのか。
ここを見極めなければなりません。
ここは社員教育にとって非常に重要なことです。

「3年後にはここまで昇ってもらわなければならない」という目標設定のもと、
そこまでの登り方をどうするのかということが階段の議論なのです。
3段で到達できる人もいれば、300段昇った人もいるでしょう。
この到達する高さの時間軸を考えていかなければ300段昇る人はなかなか成
長できません。

人材不足の中、社員教育は重要です。

階段の高さと時間軸の設定をしっかりすることにより、人材不足からくる社員
の能力不足を解決するしかありません。

5. 階段の踊り場

階段には踊り場があります。
休憩をしたり、転んだ際には下まで落ちないという様な役目があります。

これは教育にも同様で、出来る社員にもスランプが訪れます。
さらに上に昇るのか、その位置に居続けるのか、下に降りるのか。

出来る社員、私の言葉で言うと「階段の一段目が高い社員」には、
この階段の踊り場に注意をしなければなりません。

昇ってきた階段を少し整理させるとか、休憩をさせるといったことで、
さらに上へ昇っていく余裕を作らせることが大切なのです。

6. まとめ

社員教育はこの様に考えて行っていくべきだと思います。

出来る社員と比較をして、「お前も早くああなれ」といっても
出来ない人は出来ません。

がんばり方をどのように教えるのか。

本業が出来ても、自己管理などの周辺業務が苦手で手こずる人が多いように思います。

本業の仕事だけではなく、自己管理やストレスの解消の仕方などを含めて

教育をしていくとパフォーマンスを発揮できる様になると思います。

是非とも参考にしてください。

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