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人事のブレーン社会保険労務士レポート第141号
深夜零時をまたぐ場合の労働時間の考え方

1.はじめに

医療業界や介護業界は恒常的な人手不足であり、人材の確保に苦労されている経営者の皆様が多いと思います。

その中で、夜勤から日勤。日勤から夜勤といった勤務をやむを得なくしなければならないケースも多く発生しております。

これが労働基準法上どの様に考えられるのかを掘り下げていきたいと思います。

2.2日に及ぶ勤務

(1)暦日の概念
労働基準法では1日の定義はありません。
民法の特別法ですから、1日の定義は民法の一般原則に従って「午前零時から午後十二時」までの暦日の意であると解されています。

では、深夜零時をまたぐ勤務は2日勤務なのでしょうか。

(2)深夜零時をまたぐ勤務の注意点
労働基準法では、「継続勤務が二暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも一勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の1日の労働とする。」(昭63.1.1基発第一号・婦発第一号)となっております。

日付をまたいだといっても、始業時刻の属する日の勤務であり、連続した勤務ということになります。
午前零時を起点に、前後の勤務を区分し、前の勤務は始業時刻の属する勤務、後の勤務は終業時刻の属する勤務とすることは、連続勤務である以上出来ません。

ですから、午前零時をまたぐ勤務の所定労働時間が8時間を超える場合には     変形労働時間制を導入していなければ違法となるわけです。

3.日勤から夜勤の場合

日勤を務めた労働者が何らかの事情により夜勤を務める場合はどの様に考えるのか。
日勤から夜勤になったとしても日勤の始業時刻が属する日の勤務の延長であり、日勤と夜勤の間に休憩があったとしても一勤務となります。
よって例えば、始業時刻が午前9時で午後18時まで勤務し、18時30分から夜勤に入り、翌日の午前9時まで勤務した場合には、24時間拘束となり、途中休憩時間を控除した時間が労働時間となります。この時間から所定労働時間を控除した時間が割増賃金の発生の対象となる労働時間です。

4.夜勤から日勤の場合

始業時刻の属する日の勤務になりますから夜勤を行い、終業時刻まで労働した場合には一勤務になるのは前述の通りです。
ではその後に日勤をした場合はどの様に取り扱うのでしょうか。
「始業時刻の属する日の勤務」として取り扱うわけですから、夜勤から日勤になる場合には、日勤の始業時刻があります。
日勤の始業時刻をもって「その日」の勤務が開始されます。「前日」の勤務は終業時刻で終了です。
ですから、夜勤から日勤になる場合、日勤の始業時刻が明確な場合に限り、その日勤について割増賃金の発生が必要にはなりません。その日の通常勤務となるのです。
しかし、夜勤の業務が急患等の対応で延長し、翌日の始業時刻を越えて勤務する場合で、日勤としての勤務予定がないというケースでは前日の勤務の取り扱いとなります。
今だ「終業時刻を迎えていない」という概念になるのです。

5.法定休日についての注意点

労働基準法では前述の通り、1日の概念は深夜零時から午後十二時までとなっています。
法定休日も暦日で考えます。
深夜零時をまたいだ結果、法定休日に勤務することとなってしまった場合には、またいだ時点で「法定休日労働」となり、割増率が1.35の賃金を支払わなければなりません。
この点だけ注意が必要です。

6.まとめ

人材不足は深刻であり、様々な工夫をして乗り越えている経営者の皆さんがいます。
法律的に抑えるところをしっかりと抑えて対応をして頂ければ幸いです。

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