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人事のブレーン社会保険労務士レポート第127号
競業避止特約が有効とされるためには

1. はじめに

大手企業を中心に求人数が増えてきて労働市場が良くなってきました。中小企業からの転職を考える人が増えてきて、企業側も人材の引き抜き等を防止するための施策を考えなくてはいけません。
特に同業種の企業に転職をして「顧客」や「企業秘密」が流出することを懸念するご相談が増えています。
今回はこの「顧客」や「企業秘密」を守る為の「競業避止」について取り上げてみたいと思います。

2. 競業避止とは

(1)概要

企業が営業上の秘密や技術上の秘密を守る為に、社員の転職に関して制限を設けることを競業避止といいます。
企業防衛上、顧客名簿を含めた営業秘密をもって転職したり独立されたりしては困ります。
一方社員も生活があり、また職業選択の自由も存在し、この両者の調整が競業避止の問題となります。
競業避止の特約を労働契約につけることは一定の範囲で認められています。
一定の範囲とはどの様な内容なのでしょうか。

(2)制限の範囲
裁判例をまとめると、同業種への転職や独立を行う制限について以下の様なポイントで判断をしています。
「競合避止というのは無制限には許されてはならず、それを必要とする合理的理由が存在し、その必要を満たす必要な範囲内で合意がなされること」
「正当な手続を経ていること」

を前提に

「合理的範囲を確定するに当たって、制限の期間・場所的範囲・制限の対象となる職種の範囲・代償の有無」

についてを

「企業の秘密保持を行う利益」と「労働者の転職・独立の不自由という不利益」と「独占の恐れや一般消費者の利害といった社会的利害」といった3つの視点で慎重に検討をすることを要するとされています。

また「その業務が単純作業で有り、会社独自のノウハウがないもの」についてが競業避止の対象とはされないという考え方です。

競業避止の期間は2年が一つの目安となります。国家公務員の職務上の秘密保持や転職制限などの期間である2年が影響していると言われています。

(3)競業避止の特約がない場合

競業避止については特約をしっかりと労働契約書等に記載するべきですが、特約を記載していない場合にはどうなるのでしょうか。

原則として、労働者の転職や独立については制限を設けることは出来ません。しかし、企業秘密の不正利用や、競業行為が悪質で背信的な場合には、その賠償の請求などが認められるケースがありますが、しっかりと競業避止について事前に取り決めをしておく必要があると思います。

3. まとめ

学習塾など業種によっては競業避止がその会社の存続を左右するケースもあります。
また大手企業の元社員による技術情報の流出など刑事事件として立件されるケースもあります。
企業秘密と引き替えに社員を受け入れるという引き抜き行為もあります。
引き抜き行為については法律の話というよりは、企業のリスク管理として取り組まなければならない問題ですが、少なくとも競業避止についての最低限の知識を持って対応していかなければならないと思います。
今回の原稿がお役に立てれば幸いです。

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