メルマガ人事のブレーン社会保険労務士レポート

人事のブレーン社会保険労務士レポート第120号
平成25年 地域別最低賃金について

1. はじめに

平成25年の地域別最低賃金が決定致しました。
各地域の最低賃金額は以下のリンクの通りです。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11208000-Roudoukijunkyoku-Kinroushaseikatsuka/0000022438.pdf
東京は850円から19円引き上げられて869円となりました。

政府はデフレ脱却を目指して最低賃金を引き上げるとい方針を示しましたが、 これは全くの間違いであることを前回のメルマガのテーマにしました。
私の事務所では最低賃金の改定を受けて、お客様の最低賃金のチェックをして います。
賃金について850円スタートとしている会社が多く、拘束時間の長い外食、 小売り、運送などを除けば、昨年は最低賃金の改定は多くはありませんでした。
今回は869円となり、19円引き上げられたために大幅に賃金を見直さなけ ればならない企業が増えています。

例えば官公庁のビルメンテナンスを入札で受注している場合、賃金を850円 で計算していたとしましょう。
19円引き上げられたら収益に大きな影響を及ぼします。
この最低賃金引き上げにより価格転嫁をできない企業が殆どであり、特に中小 企業は大変に厳しい状況になります。

2. 月給の最低賃金額

月給者の最低賃金額は以下のように計算します。
869円(最低賃金額)×年平均月間所定労働時間
この計算方法は前回お話しを致しました。

一年間の所定労働時間を12で除して計算します。

(1)週休2日で祝祭日が休みの場合はどの様になるのでしょうか。

一年間の週の数は、365日÷7日の計算で出てきます。
52.142週です。
週休2日ですから52.142週×2日(週2日の休日として)
=104.284日
祝祭日の数15日で夏期休暇、年末年始休暇を含めて20日とします。

104日+20日=124日

365日から休日である124日を控除すると241日となります。
1日8時間としますと、241日×8時間=1,928日
一ヶ月平均を出すために12で除すと

1,928日÷12ヶ月=160.6666 =161時間となります。
869円×161時間=139,909円
週休2日で祝祭日も休める会社は(年間休日が124日)「139,909円」 が最低賃金となります。
休日数や所定労働時間が違えば当然最低賃金額も違いますから読者の皆様の企 業の労働日数と所定労働時間を必ずご確認下さい。

(2)労働日数が法定の上限の会社

一年間の所定労働時間の理論上の上限は以下の通り計算します。

365日(一年の歴日数)÷7日(一週間の歴日数) =52.142週(一年間の週数)
1週40時間が法定労働時間の上限ですから、52.142週に40時間を乗 ずると一年間の法定労働時間の理論上の上限になります。
一年単位の変形労働時間制の場合にはこの計算式が上限となりますが、一ヶ月単位の変形労働時間制や変形労働時間制を使っていない場合には各月ごとに所定労働時間数を計算していかなければなりません。

52.142週×40時間=2,085.68時間

これを12で除すと173.806となります。
これが所定労働時間の理論上の上限となります。

869円(最低賃金額)×173.806=151,037円

これが最低賃金額となります。

この様に最低賃金額の計算に当たっては、一概に月給ではいくらですとは言えないわけです。
皆様の会社の所定労働時間と年間の労働日数により決まってくるのです。

3. いつから適用されるのか

最低賃金の改訂日は東京都においては平成25年10月19日です。
これはこの日の労働から適用されるということです。

タイムカードの始業時刻が10月18日であれば10月18日の労働になります。
この日の労働が深夜0時を過ぎて19日に至ったとしてもあくまで18日の労働ですからこの日の終業時刻までは10月19日であったとしても旧最低賃金額の850円となります。

10月19日の深夜0時が始業時刻の場合は、新しい869円の最低賃金額の適用になるのです。
賃金計算期間が改訂日をまたぐ場合には改訂日前と改訂日後で単価を変えなければなりません。
月給制の場合には日割りにてチェックする事となります。

4.最低賃金の計算から除外されるもの

最低賃金の計算から除外されるものとして精皆勤手当、家族手当、通勤手当、 臨時に支払われる賃金、一ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金、時間外労 働として支払われる手当です。
また法律上は除外しなくても良いとされていますが、運送業で支払われている無事故手当や愛車手当等は事故が起きれば支給されないわけですから、この手当を含めて最低賃金の計算をしていると、事故が起きた際は最低賃金を下回る
こともあり、最低賃金の計算に当たっては、手当の趣旨を反映させるために計算に含めずに賃金額の設定を行う事をお勧め致します。

5. まとめ

最低賃金の問題点については前回書きましたので省略致しますが、拘束時間の長い業界やパートアルバイトを多く使っている業界は大変です。
価格転嫁できればいいのですが、価格転嫁をすることは非常に難しいのです。
ここを政府が理解していない点が残念でなりません。

労働基準監督署の調査につきましても、最低賃金額が大幅に上昇しましたら最低賃金のチェックに絞って多くの企業を対象とした調査をすることも予想されます。
1ヶ月のなかで色々と対策を立てることは大変ですが、最低賃金の対策をしっかりと立てなければなりません。

今回は実務的な内容の記事に致しました。
ご参考にして頂ければ幸いです。

 

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