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人事のブレーン社会保険労務士レポート第114号
退勤猶予時間の考え方

未払い賃金への関心の高まりと共に、労働時間の集計について「1分単位」で集計をしなければならないのか。
この様な質問があります。
この問題は「退勤猶予時間」として考えます。
退勤猶予時間とは、仕事が終わりタイムカードを押すまでの時間です。
この時間は業務を終えている時間ですから賃金を支払う必要はありません。
タイムカードとは拘束時間を証明するものであって、拘束時間が労働時間ではありません。

タイムカードの前で働いているわけではないですから、仕事が終われば直ちにタイムカードを打刻するという事は出来ません。
業務を行っている場所からタイムカードまでの移動時間はどのくらいか。
3分かかれば退勤猶予時間は3分です。
5分かかれば5分なのです。

しかしこれは仕事が終わり、直ちにタイムカード打刻場所へ移動した場合です。

業務が終わり、自分の使っていた湯飲み茶碗を片付け、私物を持って「お先に失礼します」と言って、タイムカードを打刻するケースが多いのではないでしょうか。
打刻前に10分以上おしゃべりをしている事例もあります。

これを含めて退勤猶予時間を算出しなければ正確な労働時間を算出出来ません。

仕事が終わったら直ちにタイムカードを打刻せよという教育も必要ですが、常に上司がいるわけでもなく、仕事が終わり解放感から多少のおしゃべりもやむを得ないでしょう。

この退勤猶予時間がどのくらいあるのか。
これを把握することが大切なのです。
「一般的には退勤猶予時間はどの程度認められるのですか」という質問を受けますが、一概には言えません。
その組織の風土によります。

未払い賃金を計算する場合にもこの退勤猶予時間を使用者はしっかりと主張する必要があります。
経営者が一律にカットしているわけではなく、退勤猶予時間を考慮して労働時間の集計をしているわけですから。

タイムカードを業務終了後直ちに押すこととする組織風土を作ることを目指すべきですが、簡単ではありません。

企業の実情に合わせて、退勤猶予時間をどの程度として使用者は考えているのかということを労働者と共有することも大切です。

退勤猶予時間を含めて1分単位で労働時間を集計する必要は無く、常に実態を把握することで、説得力がでてきます。
晴れの日に傘を用意する。
労働基準監督署から「なぜ1分単位で労働時間を集計しないのか」と質問をされても、退勤猶予時間の実態をしっかりと説明すれば少なくとも労働基準監督官は理解を示してくれます。
労働者から賃金を請求されても、実態を常に把握していることで、企業の主張の説得力は増します。
是非「退勤猶予時間」の実態把握をしてみてください。

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