コラム社会労務の基礎知識

新入社員教育に必要な3つの視点

1. はじめに

 先日とある中学校で「中学生からできる職業訓練」と題して講演をしました。
中学生を相手とした講演は初めてであり、いかに分かりやすく伝えるか苦心しましたが、非常によい経験になりました。
内容としては新入社員向けの社員研修を中学生向けに構成し直しました。
私は職業に関する能力は、仕事以外のことでも身につくと考えており、中学生でも目の前のことを一生懸命やることで、将来仕事をしたときに必要な能力が身につくという視点でお話をしました。
私のお客様で、新入社員向けに何を教育したらいいのかとご相談される方がいらっしゃいます。
そのような方の参考にしていただきたく、今回のテーマといたしました。

2.仕事に必要な3つの視点

仕事を進めるのに必要な視点は以下の3つにまとめられると思います。

  1.  1) 全体を見て行動する。
  2.  2) 優先順位をつける
  3.  3) コミュニケーション
  4. 3つは相互に連携をしており、3つが有機的に結びついて初めて能力が発揮できると考えます。

 

(1)全体を見て行動する
これは「自分が常に何をすべきか」を考えて行動するということです。自分の仕事しかやらない人はどうでしょうか。組織は多数の人間で構成されており、各々の役割があります。
その役割を十分に果たしながら、その組織の中で、自分は何をすべきかを考えるということです。
当然優先順位も変わるでしょうし、仕事を進める上でのプロセスやコミュニケーションの方法も変わるでしょう。
後輩が入ってくれば「教育」という視点も必要になってきます。
自分が何をすべきかしっかりと考えて行動をするということは、「言われた事しか出来ない」ということを防止する為の大事な視点なのです。

2)優先順位をつける
優先順位をつけることは大事です。これは皆さんも納得していただけるでしょう。
しかしここで重要な視点は「優先順位は常に変わる」ということです。
優先順位は常に変わるのです。
では、その物差しは何を基準に決めればいいのでしょうか。
「全体を見る」という習慣によって、今何をすべきかという「優先順位」が初めてつけられます。
私は学生時代に外食業界でアルバイトをしていました。
外食という業界で2年間働いて感じたことは「接客とは優先順位を考えることだ」ということです。
どのお客様も大切であり、入店され、速やかにお席に案内をし、注文をとり、料理を提供する。そして、お会計もスムーズに行って気持ちよくお帰りいただく。
これが大切なことなのです。
しかし、お客様に注文をとる際に、ほかのお客様から声をかけられたり、グラスを割ったりと優先順位は常に変わります。
お客様にサービスを提供する際には「今何をすべきか」を常に考えて優先順位をその都度組み替えなければ適切なサービスを提供することができません。
全体を考えて、優先順位を常に見直すという作業は常に行うことが求められるのです。

3)コミュニケーション
仕事は一人で行えません。
全体を考え、優先順位を決めても、それを実行するには他人と協力をしなければなりません。
複数優先順位の高いことがあった場合、他の人に声をかけて協力をしてもらう必要もあります。
前にもお話ししましたが、後輩が出来れば教育という作業も必要になります。
教育はまさにコミュニケーションです。
言いにくいことでもしっかりと相手に伝えなければなりません。
働くと言うことは、他人とコミュニケーションをとるということと言っても過言ではありません。
このコミュニケーションをどの様にとっていくかという物差しになるのは、「全体を考える」ことと「優先順位をつける」ということなのです。
この3つは有機的に結ばれているのです。

3.まとめ

私のお客様の外食産業では、毎年3月にアルバイト学生の卒業パーティーをやるのですが、ここで私は「外食産業で働いた経験はどこの会社に行っても活かされる」とお話しします。全体を考え、そして優先順位を常に組み替える。その結果を他人と共有して仕事をしていく。この訓練をアルバイトを通じて行っているのですから、社会に出たら絶対に役に立つはずです。
自分の仕事だけを一生懸命やる人がいますが、自分の仕事だけを100%やっても、それは自分の職責を100%果たしたことにはなりません。
この訓練は社会に出る前から出来るのです。
学生時代のアルバイトや部活。
新入社員に対して、自分がやってきたことを振り返ってもらい、「全体を考える」「優先順位をつける」「コミュニケーション」の3つをどの様に実践してきたのかを考えてもらうことで、社会に出る前の経験を、社会に出てからの力に変えることが出来るのです。
是非ともやってみてください。

「初出:週刊帝国ニュース東京多摩版 知っておきたい人事の知識 第43回  2013.7.23号」

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