コラム社会労務の基礎知識

非正規社員の労務管理【社員の区分は労務管理用語でしかない】

1. 誤解の多い非正規社員の取り扱い

正社員とパートタイマーやアルバイトの違いは何であろうか。
実はこの点に関して、法律上の定義はありません。
正社員であろうとアルバイトであろうと、労働法の適用に大きな違いはないのです。
解雇をするにあたっても、「客観的合理的な理由の存在」については正社員もそれ以外の社員も同じです。

2. 労務管理用語でしかない社員の区分

では何故、準社員や契約社員、パートタイマーといった名称が使われているのでしょうか。
これは、画一的に労務管理を行うためです。
準社員は賞与が支給されない。契約社員は賞与が支給されず、かつ期間の定めのある雇用契約である。この様に会社が定義をして、これらの労働者を画一的に管理する為に使われているのです。

3. 非正規社員と解雇

解雇とは「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と労働契約法第16条に規定されています。
これは労働契約法成立前から、判例として確立されていたもので、この基準をもって解雇の効力が判断されます。これを専門的には、「解雇権濫用法理」といいます。
解雇に至る経緯は様々であり、具体的に規定することは困難であるが為に、曖昧な規定になっているのです。
この規定は、正社員に限らず、全ての労働者に適用されます。
ですからパートタイマーだからという理由のみで簡単に解雇を出来る訳ではありません。

4. 期間の定めのある労働契約と解雇

期間の定めのある労働契約の場合、その労働契約期間内での解雇は正当な理由がなければ出来ません。
では、労働契約期間の満了をもって、その労働契約を更新しないということは出来るのでしょうか。
これは「雇い止め」と言います。

5. 「雇い止め」とは

労働契約期間満了をもって、この労働契約を更新しないとする場合に、その労働者が契約の更新を希望している際にどの様に考えていくのでしょうか。
契約期間が複数回更新されていたり、形式的な更新であった場合には、有期雇用契約が、期間の定めのない労働契約に転嫁されていると判断されます。この場合、契約の更新をしないことに「解雇権の濫用」が適用され、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当」であると認められなければなりません。

6. 期待権の保護

有期雇用契約が期間の定めのない労働契約に転嫁されているとまでは言い切れない場合はどうでしょうか。
このケースは判例を用いて説明しましょう。
30人が採用され、2ヶ月の雇用契約期間を締結しました。内1名のみが初回の契約更新を拒否され、他の29人は契約の更新がされました。
これは契約更新について、大多数の労働者が契約を更新されており、特に問題がなければこの労働契約を更新するのであろうと、労働者が期待することは当たり前であると裁判所は判断しました。
そしてこの期待は、法的に保護するべきものであり、この期待を反故にすることは労働者の期待権の侵害であり、無効であると判断しました。
何もなければ契約は更新されるという期待を抱かせた場合には、解雇権濫用法理が適用されるのです。
そもそも誤解がなければ労使問題も減るわけですから、期待を抱かせる言動は注意をしなければなりません。
また、このケースの場合には、他の労働者が全員更新されているのですから、期待権の侵害と判断されてもやむを得ないと考えます。

7. まとめ

正規社員と非正規社員の問題がクローズアップされていますが、労働法の適用については大きな違いはありません。
経営者の思いこみからトラブルが発生しないように、非正規社員の問題を取り上げました。

「初出:週刊帝国ニュース東京多摩版 知っておきたい人事の知識 第10回 No.718 2010.9.21号」

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