コラム社会労務の基礎知識

問題社員の対処方法【なぜトラブルが起こるのかを考えてみる】

1. 問題社員とは何か

筆者はこのテーマで講演する場合、「問題社員とはどの様な社員ですか?」と必ず質問する。返ってくる答えは「協調性がない」「ミスが多い」「やる気がない」等様々である。
問題社員の定義とは、人それぞれである。
これが実は問題社員の対処に苦労する問題点なのである。労働者の視点から問題点を探ってみたい。
トラブルを防止する注意の方法については誌面の関係から次回にしたいと思う。

2. 日々注意されることが違うとどう思いますか?

上司から、日々注意されることが違うと「私は上司に嫌われているのであろうか」と感じる。今日は「口の利き方」、昨日は「入力ミス」、一昨日は「報告ミス」等々、この様な注意をされると、「嫌われているから厳しく注意されるのだ」と感じる労働者は多い。
この様な日々の些細なことの積み重ねで、労使間のトラブルが生じることが多い。

3. 労使紛争とは感情的対立をベースとした法的紛争である

労働者は少なからず上司や経営者に認められたいと思っている。そして、どんな労働者でも「自分は頑張っている」と思っている。それが勘違いだとしても、当を得ていないがんばり方だったとしても思っているのである。
労働者のこのプライドが、何かのきっかけで傷つく。そうすると感情的になる。それが解決されないままでいると、「今まで我慢できていたことが我慢できなくなる」とか「一層反抗的になる」といった状態になる。「あの上司は気にくわない」と声高らかに主張しても、通常であれば、その主張が受け入れられることは考えにくい。そこで法的権利の主張をすることにより、その不満の解消をしているのである。

4. 表面的主張を解決しても役に立たない

法的な権利の主張が「表面的主張」であり、「今まで我慢できていたことが我慢できなくなる」等の行動が、表面的行為である。そして「プライドが傷つく」等の問題が原因行為であり、この原因行為を解決しなければ本質的な解決にならない。
そしてこの解決を阻害する大きな要因は「感情」である。
労働者の話を聞いて、この感情という大きな風船を小さくしなければ解決できない。
この風船を小さくすることがまさに解決への交渉である。
これを図にまとめたのでご参照頂きたい。

5. 他人が入ると解決がしやすくなる

社内でトラブルが発生した場合、当事者に解決させる事は避けるべきである。 筆者が労使紛争に関与し、解決することは多い。これは筆者に特別の能力があるのではなく、感情的に中立だからである。労働者は、私に対して感情的になっていない。この状態で、話を聞くことにより、「原因行為」を突き止めることができる。
そして「感情」という風船をどの様に小さくしていくかを考えていくのである。
実はこれが労使交渉の実務であり、初めからお互いに権利の主張をしていては解決に時間がかかるばかりか、より感情的になってしまう。

労使紛争が発生する経緯

「初出:週刊帝国ニュース東京多摩版 知っておきたい人事の知識 第7回 No.703.2010.6.08号」

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