コラム社会労務の基礎知識

賃金の正しい決定方法②【定額残業という考え方がある】

1. 残業手当予算化の問題点

vol.2は「残業手当の予算化」の重要性について言及しました。
しかし残業手当を予算化した場合、基本給を代表とする、毎月必ず支給する賃金額が少なくなってしまいます。
例えば、人件費の予算を30万円とした場合、まず15%である45,000円を法定福利費とします。(賃金の構成は基本給のみとして考えます。)
255,000円が賃金額の上限となります。毎月30時間残業することとした場合、基本給は210,000円になります。
毎月コンスタントに30時間の残業があれば労働者の賃金は予算の上限である255,000円になりますが、連休が多い月や閑散期では255,000円の賃金をもらうことが出来ない可能性があります。残業手当の予算化は、残業を払うことが出来る賃金水準の設定が目的であり、人件費の削減が目的ではありません。この様に、労働者の賃金が当初見込額より低くなってしまい、人材確保やモチベーションの向上という観点から問題が生じてしまいます。

2. 問題の解決方法としての定額残業手当

この問題を解決する方法が「定額残業」という考え方です。
前述の事例では、210,000円を基本給とし、45,000円を実際の残業時間が30時間未満であっても減額せずに支給するという方法です。当然、30時間を超過した場合には、超過した部分の残業手当を別途支給しなければなりません。
まとめると以下の図の通りです。

定額残業手当の枠組み

「初出:週刊帝国ニュース東京多摩版 知っておきたい人事の知識 第3回 No.688 2010.2.16号」

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