人事のブレーン社会保険労務士レポート第197号
新型コロナウィルスに罹患若しくは感染の疑いのある労働者への対応
1.はじめに
新型コロナウィルスが国内でも流行の兆しが出てきました。
冷静な対応が望まれるところですが、社員が感染したり、社員が濃厚接触者とされた場合にはどの様にすればいいのか。
平成21年の新型インフルエンザの際の行政解釈を基にまとめてきました。本稿が読者の皆様に役立つことが無い結果となって欲しいのですが今回は2月13日の報道を受けて原稿を差し替えてテーマといたしました。
2.新型コロナウィルスに罹患した社員への対応
(1)風邪の症状の場合
今回のウィルスは潜伏期間が長く、初期は風邪の症状と似ているとのことです。
微熱等の社員が休む場合には通常の病気欠勤と同様の取り扱いで問題ありません。
自主的に社員が休む場合がこれに該当し、鼻水や咳が出ているから強制的に休まるということは使用者の責めに帰すべき事由に該当し休業手当の対象になります。通常の病欠と同様ですので年次有給休暇の請求があればそれを取得させなければなりません。
ポイントは自主的な欠勤という事になります。
ウィルスの蔓延を防ぐ為には休みやすい環境づくりが望まれるところであります。
(2)新型コロナウィルスと診断された社員への対応
新型コロナウィルスに罹患していることとなった場合には病欠扱いになり休業手当の支払いは必要ありません。
医師や保健所等の行政機関からの指示により欠勤する場合も同様になります。但し、医師や行政機関等から出勤可能であるとされた日以降に会社が出勤を認めない場合には休業手当の対象になります。
ウィルスが陰性になり、出勤可能とされていても体力的な問題から引き続き欠勤することも想定されます。
この場合には社員の自主的な判断であれば休業手当の対象になりませんが、会社が強制する場合には休業手当の対象になります。
また年次有給休暇の申請が当該社員よりあった場合には年次有給休暇を取得させなければなりません。
3.社員が濃厚接触者とされた場合の取り扱い
感染者と濃厚接触があり感染の疑いがある社員については医師や保健所等の行政機関が自宅待機等の指示があった場合には欠勤となりま す。
家族が濃厚接触者で社員本人が濃厚接触者として取り扱われず医師や保健所等の行政機関から特段指示がない場合には強制的に休ませる合理的理由にならず休業手当が必要になります。
ポイントは「医師や保健所等の行政機関の指示」になります。適切な判断を医師や行政機関が行うことが前提になりますが、今後感染拡大とともにこの「指示」がどうなっていくのか注視しなければなりません。
4.職場で大規模感染が疑われる場合
職場で大規模感染が発生若しくは疑われる場合には医師や保健所等の医療機関と相談し、その指示に従い休業する場合などは休業手当は必 要ないと判断される可能性が高いです。
また今後感染が拡大し、出勤や営業の自主等の要請等がなされる場合には、その要請等が行政機関からのものであればそれに伴う休業については休業手当を支払う必要がないという事になります。
5.まとめ
濃厚接触者への対応や外出等の自粛要請に伴う休業などは行政機関からの指示であるかどうかが休業手当を支払うかのポイントになります。
政府の判断や指示を注視していく必要があります
我々にできることは個人レベルでの感染防止ですからしっかりと予防するために努力をしていき、この記事が活用されるような事態が生じないことを切に望む次第です。