「壁」に関する誤解を解く―103万円の壁が示すもの―
1.はじめに
税制や社会保険における「壁」には、様々な誤解がつきまといます。103万円の壁をはじめとした各種の基準について、改めて整理します。
壁は必要な仕組みである。
「壁」とは、課税・非課税の境界線です。
たとえば、祖父母が孫に渡すお年玉にまで税金が課されるとすれば、日常の温かい人間関係にまで国家が介入することになります。
こうした小さな贈り物に課税しないための非課税枠は、社会の潤滑油として機能しています。
つまり「ここからは課税対象、ここまでは非課税」という基準線を引くこと自体は、決して悪いことではありません。
2.立場によって「壁の高さ」への意見は異なる
問題となるのは、壁の位置をどこに設定するかという議論です。
人は自分の立場から損得を判断するため、「壁を上げてほしい」「いや、下げるべきだ」と意見が分かれがちです。
しかし、本来この議論が目指すべきは個人の損得ではなく、「社会全体としてどこに基準を置くべきか」という視点です。
3.不公平感をどう捉えるか
現実には、一生懸命働いて税金・社会保険料を納めている方がいる一方で、壁の範囲内で意図的に就労時間を調整している方もいます。
どちらの選択も個人として合理的ではありますが、社会全体でみると不公平感が生じることも事実です。
この不公平感を解消するためには、損得論に終始するのではなく、「いつ、どの水準で、税や社会保険の義務を負うべきか」という制度設計の本質に立ち返った議論が必要です。
壁の議論は、損得の問題ではなく、社会の設計の問題です。
文責 特定社会保険労務士 山本法史

