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人事・労務の知識

金融機関が嫌う「社会保険の未加入」—財務リスクの実態と対策—

1.はじめに
金融機関は、融資先企業の社会保険未加入を非常に嫌います。
その理由は明快です。融資したお金が、後日、役所からの差押えによって回収不能になるリスクがあるからです。

2.なぜ回収不能になるのか
社会保険料は、従業員と会社が半額ずつ負担する仕組みです。
仮に従業員一人あたりの負担額が月3万円であれば、会社もあわせて月6万円を納付することになります。
問題は、役所による調査が入った場合です。
社会保険料は2年遡って請求されることがあります。
未加入期間が2年に及ぶと、従業員一人あたり次のような金額が一気に請求されます。
3万円 × 12ヶ月 × 2年 = 72万円
この72万円は、本来であれば毎月の給与から少しずつ控除できたはずの金額です。
しかし一括請求となった場合、従業員に「72万円を支払ってほしい」と求めても、現実的には応じてもらえないケースがほとんどです。

3.会社への影響は甚大
仮に対象となる従業員が10人いた場合、従業員負担分だけで720万円、会社負担分を含めると1,440万円が役所から一括請求されることになります。
これだけの金額が一度に引き落とされれば、資金繰りは一気に悪化します。さらに、保険料の滞納が続けば差押えに発展する可能性もあります。

4.金融機関が融資を躊躇する理由
銀行にとって、融資先の資金繰りが悪化することは、貸し付けた資金の回収が困難になることを意味します。
社会保険未加入は、こうした突発的なキャッシュアウトを引き起こすリスク要因として、財務デューデリジェンスにおいて明確なマイナス評価となります。

5.まとめ
社会保険の未加入は、単なる法令違反にとどまらず、企業の財務基盤を揺るがすリスクです。
金融機関からの信頼を守り、安定した資金調達を実現するためにも、社会保険への適切な加入と運用を今一度ご確認ください。​​​​​​​​​​​​​​​​

文責 特定社会保険労務士 山本法史

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