KNOWLEDGE OF PERSONNEL AND LABOR

人事・労務の知識

定年退職後の賃金引下げは可能か ― 同一労働同一賃金の観点からの留意点 ―

定年退職後に再雇用した社員の労働条件を引き下げても問題はないのか、というご質問を多くいただきます。

この点については、「同一労働同一賃金」の原則を踏まえて慎重に検討する必要があります。

定年前と定年後で、業務内容や責任の程度が変わらないにもかかわらず、賃金のみを引き下げる場合には、不合理な待遇差と判断される可能性があります。
年齢のみを理由として賃金を減額することは、同一価値労働同一賃金の原則の趣旨に照らして問題となり得ます。

一方で、職務内容や責任の範囲が縮小する場合、勤務時間が短縮される場合、夜勤を免除する場合など、労働条件に実質的な変更があるときには、その内容に応じて賃金を見直すことが許容される可能性は高くなります。
重要なのは、「何がどのように変わったのか」を明確にし、その変更内容と賃金水準との間に合理的な関連性があるかどうかです。

特に現在は人手不足の状況が続いており、定年後も働き続けてくださる方は企業にとって大変貴重な存在です。単にコストの観点から賃金を引き下げるのではなく、役割や期待水準を整理したうえで、納得感のある労働条件を設計することが重要です。

定年後再雇用制度を設ける際には、職務内容、責任の程度、勤務形態を明確にし、それに応じた賃金体系を構築しておくことが、トラブル防止とモチベーション維持の双方につながります。

制度設計は慎重に行い、将来的な紛争リスクを回避するとともに、経験豊富な人材の力を最大限に活かせる環境づくりを進めていくことが求められます。

ぜひ、制度見直しの際の参考にしてみてください。

文責 特定社会保険労務士 山本法史

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