歩いて通勤したら不正?―通勤手当の適正申請をどう考えるか―
9月19日付の読売新聞において、ある自治体職員が通勤手当を不正に申請していたという記事が掲載されました。
内容を読むと、確かに規程違反に該当する事案ではありますが、同時に企業として非常に注意すべき論点も含まれていると感じました。
例えば、次のようなケースは少なくありません。
• バス通勤で申請しているが、健康のために実際は徒歩で通勤している
• 電車の定期を申請しているが、1駅手前で降りて歩いている
• 公共交通機関で申請しているが、実際には自転車で通勤している
このような場合、企業としてはどのように考えるべきでしょうか。
交通費という観点からすれば、「実際に使用していない区間については支給しない」という考え方もあります。
一方で、「健康のための取り組みであり、その程度であれば一定の範囲で許容する」という考え方もあり得ます。
重要なのは、会社としての方針を明確にしているかどうかです。
実際に使用しなかった区間の交通費は支給しないのか。
それとも、一定の範囲内であれば認めるのか。
この点を曖昧にしたままにしておくと、後になって「それは不正です」と指摘しても「不正」とは言い切れないケースも出てきます。
特に、悪意があって行っているわけではなく、「健康のため」という善意の動機で取り組んでいる従業員に対して、ある日突然「不正です」と判断することになれば、本人にとっても大きな衝撃となるでしょう。
結果として、労使間の信頼関係を損なう可能性もあります。
だからこそ、通勤手当の取り扱いについては、労使間でしっかりと話し合い、明確なルールを定めておくことが重要です。
通勤手当は「実費弁償」なのか、「通勤に対する一定額の補助」なのか。
その位置づけを整理し、申請方法や変更手続きのルールを明確化しておくことが、無用なトラブルを防ぐことにつながります。
健康のための取り組みが思わぬ問題とならないよう、今一度、自社の通勤手当の運用を見直してみてはいかがでしょうか。
文責 特定社会保険労務士 山本法史

