「扶養」の定義を明確にしないことによるトラブル防止について
「扶養要件」の誤解を防ぐためには、「扶養」の主語を明確にすることが非常に重要です。
日常的によく使われる「扶養」という言葉ですが、実はこの言葉はどの制度に基づく話なのかによって、内容や結論が大きく異なります。
例えば、「被扶養者」という言葉一つを取っても、
• 所得税法上の扶養を指しているのか
• 健康保険法上の扶養を指しているのか
によって、基準となる金額や考え方はまったく異なります。
所得税法上の扶養の話であれば、いわゆる「178万円の壁」といった税金の議論になります。
一方で、健康保険上の扶養であれば、「130万円」であり、保険証の被扶養者に関する議論になります。
このように、同じ「扶養」という言葉でも、制度が違えば基準となる数字も結論も全く異なります。
そのため、主語や前提を明確にしないまま話を進めてしまうと、議論が混在し、内容が分からなくなってしまいます。
また、「当社で働いている社員の配偶者」という表現についても注意が必要です。
これは多くの場合、他社で働いている社員の配偶者を指しています。
つまり、当社で勤務している方は「配偶者」であり、その配偶者(夫または妻)が別の会社で勤務している、という関係になります。
この点についても主語を曖昧にしたまま説明を行うと、
「会社の説明通りに働いたのに損をした」
「知らないうちに扶養から外れてしまった」
といった不満やクレームにつながるおそれがあります。
以上のことから、「扶養」に関する説明や議論を行う際には、
• 何の制度の扶養なのか(税金か、社会保険か)
• 誰を基準にした話なのか(本人か、配偶者か)
といった主語・前提を必ず明確にした上で行うことが重要です。
会社としても、誤解や不利益が生じないよう、扶養の議論については主語を明確にした説明を心がけてまいります。
文責 特定社会保険労務士 山本法史

